コラーゲンが分解されてできるペプチドの中に生理活性をもつものがある・・・私はこの考えに取りつかれた。
 まず考えたのが、アンジオテンシン変換酵素の阻害活性である。陳腐な考えだけれど。アンジオテンシンは血圧を上昇させる物質である。体内には活性のないアンジオテンシンIという形で存在していて、アンジオテンシン変換酵素が作用すると、活性のあるアンジオテンシンIIになる。
 アンジオテンシン変換酵素を阻害すると、血管の平滑筋の収縮が抑えられる。その結果、血液の流れが増加する。それは体に、いろいろなよい影響を与える可能性がある。たとえば傷は早く治癒し、肌の状態は改善される可能性がある。
 アンジオテンシン変換酵素を阻害する物質の研究が行われていて、阻害活性を持ついろいろなペプチドが見つかっていた。コラーゲンの分解物にもこの活性の存在が報告されていた。
 私は、コラーゲンが分解されると、アンジオテンシン変換酵素を阻害するペプチドが生ずるのではないかと考えた。そこで既知の阻害ペプチドの一つを手に入れて、高橋周七博士に、コラーゲン分解物と同じような効果があるかどうか、試してほしいと頼んだ。どんな試験をしていただいたのかは忘れてしまったが、多分ラットの創傷治癒への効果だったと思う。
 結果は、残念ながらネガティブだった。
 現在では、コラーゲンの分解物中に、アンジオテンシン変換酵素の阻害ペプチドがいろいろ発見されており、コラーゲン摂取の効果の一部を担っていると考えられる。