新型コロナウイルスのせいで、わが「ポムポム川の辺」も厳重な警戒態勢にある。外部の人の面会は謝絶。家族さえ、ホームの中に入れない。しかたないなと思っている。
 ところが、外部の人が、しばしばホームの中にやってくる。入居に興味を持つ人たちが、下見にやってくるのだ。
 「ポムポム川の辺」は昨年末に出来たばかり。まだかなりの数が空き部屋のまま残っている。そこで、入居者を募集して、ホームをいっぱいにしたいらしい。
 見学者は、連日のようにやってくる。入居を希望するご本人ひとりではまず来ない。いや、多分来られない。そこで、ご本人と家族の人たち、あるいは家族の人たちだけで来る。ひとりの事は少ない。たいていは2人から4,5人。もっと多いこともある。それにホームの人が案内のために同行する。所長さん自らが、案内と説明役をつとめることが多い。
 もちろん、マスクをしているけれど、かなり大きな声で話しながら、ぞろぞろと、施設を見学する。一人部屋、二人部屋、狭い部屋、大きな部屋、南向きの部屋、北向きの部屋、共同の施設・・・と案内していく。
 ホームの運営からすれば、空き部屋は困るのだろう。入居者で部屋を全部埋めたいことはわかる。よくわかるけれども、今は緊急事態だ。ちょっと考えてほしい。
 入居者の家族さえ入れないのだ。
 ホームの壁には、社長さんのにこやかな笑顔のポスターが貼ってある。介護士さんたちも、いつも笑顔で、やさしい。
 この笑顔と、ホームのビジネス優先の間に、ギャップを感じてしまう。
 繰り返すけれど、私だって、老人ホームは慈善事業じゃなくて、商売だと理解している。でも、ちょっと、いやみを言いたくなる。