私が若いころは、ラジオで落語をよく放送していた。私もよく聞いた。当時は、古今亭志ん生と桂文楽が、代表的な落語家だった。志ん生の落語は、天衣無縫の語り口、一方、文楽の落語は洗練された名人芸といわれた。
 そりゃ、志ん生は面白かった。というか、志ん生がひとこと言うと、お客さんがどっと笑う。つられて、私も笑ってしまう。
 当時の若手に、柳家小三治がいた。正統派で、上手だ。この人は、将来大物になると思った。いま、小三治師匠は名人と呼ばれ、人間国宝になっている。私もなかなか見る目があったと、自慢したくなる。
 笑いは健康に良いとよくいわれる。でも、どのくらい科学的根拠があるのだろうか。
 ふつうは、薬物の効果をきちんと調べるには、二重盲検法が求められる。調べる薬物と、対照用の偽薬(プラセボ)とを、医師・患者ともに知られないように投与して、客観的な判定をする。
 それでは、「笑い」の場合はどうだろう。まず、プラセボはどうするのだろう。つまらない話を聞かせるのだろうか。たとえば、へたくそな落語家の話とか、あるいは学者のこむずかしい講演とか。プラセボを演ずる人はイヤだろうなあ。
 それに、被験者には、これは「笑い」、これは「プラセボ」だとすぐにバレてしまう。これでは、二重盲検にならない。
 インターネットでちょっと調べてみた。笑いの効用の学術論文は、数は多くないけれどもあった。
 笑いの効果の調べ方としては、被験者に落語や漫才をたっぷり聞かせ、その前後で調査をして、比較しているようだ。たとえば、関節リュウマチの患者さんにお笑いを聞かせて、前後で痛みの程度を調べるというやり方である。
 残念ながら、プラセボは使っていなかった。
 笑いは、薬とは違う。笑って楽しければ、それで良い。その結果、健康状態がよくなったと感じれば、さらに良い。薬扱いにするのが間違いだった。
 天の声「あたりまえだ」 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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