真鍋淑郎さんがノーベル賞をもらって、頭脳の海外流出が、話題になっている。真鍋さんは、大学院を修了したあと、ずっとアメリカで研究生活を送っていた。国籍もアメリカである。
私がアメリカに留学したのは、1960年代だが、日本からの頭脳流出組の研究者に何人も出会った。
なぜ、日本から流出したのか。まず、給料。何しろ、額が違う。アメリカの方が何倍も高い給料をもらえた。
研究制度も違う。当時の日本は、いわゆる講座制で、教授が全権を握っていた。今でいう、パワハラ、アカハラは、当たり前だった。よい仕事をしても、教授の名前を入れて論文を書き、教授の業績になってしまった。
アメリカでは、業績があがれば、若くても自分の研究室を持てる。そうすれば、自分の名前で発表できる。それが、また自分の業績になる。
ただし、業績があがらければダメだから、大きなストレスにはなる。
真鍋さんは、日本に帰りたくなかった理由の一つとして、「周囲に同調して生きていく能力がないからです」といわれた。確かに、日本の社会は、人間関係が濃密というか、べたべたしていて、それがとても煩わしいという人もいた。
でも、若いうちはアメリカで頑張りたいけれど、やっぱり年をとったら、日本に帰りたいという人も少なくなかった。その気持ちもわかるなあ。
そのために、10万ドルを目標に、貯金しているという先生がいた。当時、10万ドルあれば、日本で悠々暮らせたわけである。
私は、海外流出をしたいとい気持ちには全然ならなかった。英語がへたくそだし、臆病だし、怠け者だったし、だいたい、どこからもお呼びがかからなかったし・・・
天の声「それじゃだめだ」