北帰行という歌がある。そこでは「北へ帰る旅人ひとり・・・」と歌われている。津軽海峡冬景色という歌が、昔ヒットした。その歌にも「北へ帰る人の・・・」という歌詞が出てくる。北国の春という歌にも「あのふるさとへ帰ろうかな・・・」という歌詞がある。
 みんな「北へ帰る」である。南へ帰るといわない。南に帰るのはツバメぐらいだ。
 北の寒くてきびしい自然の地から、温暖な都に出てきた。しかし夢は破れて、また北の厳しい地へ帰っていく。それが涙をさそう。これが、南の保養地に帰るのでは、涙は出ない。
 私は最初、「北へ帰る」が心に響くのは、日本人の祖先が北からやってきたからだと思っていた。でも、どうやら違うらしい。日本人の祖先は、大陸から朝鮮半島を通ってやってきたという。そして日本列島の南の方から北へ広がっていった。結果的には、先住民族を北へ追いやってしまった。「北へ帰る」は、日本人の起源からは説明できそうもない。
 地球の温暖化が進むと、北の厳しい自然環境が変化していく。むしろ北の大地は住み心地の良い、温暖な土地になっていくだろう。南は暑くてたまらない。気候の厳しい住みにくい土地は南ということになるかもしれない。首都も北へ移転。そうしたら「南帰行」という歌ができるかなあ。
 天の声「バカバカしい」