動脈硬化は動脈の壁が厚くなり硬くなって、弾力性を失った状態をいう。一種の老化現象だという人もいる。脳動脈で起これば脳梗塞の原因になるし、冠状動脈で起これば心筋梗塞の原因になるから恐ろしい。
 動脈硬化におけるコラーゲンの立場は微妙である。「コラーゲンは、”the good, the bad and the ugly”だ」と、サブタイトルや見だしに書いている論文をみつけた。二つもあった。
 The good, the bad and the ugly というのは、クリント・イーストウッド主演のマカロニ・ウエスタン映画のタイトルである。日本では「続夕日のガンマン」というタイトルで上映された。
 それでは、コラーゲンは動脈硬化において、善玉か、悪玉か?
 動脈硬化の始まりは、脂質の沈着で、動脈壁の内膜という部分で起こる。やがて、脂質が蓄積して、膨れ上がった部分ができる。一方では、コラーゲンの合成が盛んになって、脂質蓄積部の表面はコラーゲンの線維でできたキャップでおおわれる。
 さらに進行すると、コラーゲンでできたキャップは薄くなって、やがて破けてしまう。そうすると血栓ができて、血液の流れが妨げられることになる。また血栓がはがれて別の場所にとんでいき、血栓症を引き起こす。急性の心筋梗塞の多くはこのようにしておこると考えられている。
 動脈内膜にコラーゲンが増えると、血流の妨げになる。これは体にとって不都合である。コラーゲンは the bad, 悪玉ということになる。
 しかし、コラーゲンがこわれて、キャップが破裂してしまうと、急性心筋梗塞など深刻な結果を招くことになる。コラーゲンがこわれると困る。ここでは、コラーゲンは the good, 善玉である。
 したがって、コラーゲンの合成の研究も、分解の研究も、どちらも動脈硬化の治療の研究には重要なのである。
 the ugly が何を意味するのかは、私は知らない。
 天の声「マカロニウエスタンのタイトルを見つけて、面白がっているだけだな」

 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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