いま私の手元に、マガジンハウス社の「プロ野球選手ベスト100人」という古い本がある。1995年発行の新書だ。
1995年といえば、長嶋、王(敬称略します)はもうずっと前に引退していた。イチローがデビューしてシーズン200本以上の安打の記録を出したころだ。そんな時代の本なのに、やっぱりプロ野球の主役は長嶋と王。表紙は、長嶋、王、イチロー3人の似顔絵で飾られている。
長嶋は、3塁手、好きな選手の各部門の一位、それにアベレージ・バッター、守備の名手、名監督の部門でも選ばれている。王は、一塁手とベスト・ホームラン打者に選ばれている。
この二人は、ほぼ同時期に活躍した。たくさんの個人タイトルを取り、そうしてチームの日本一9連覇に貢献した。
「両雄並び立たず」という言葉がある。英雄は二人両立することができず、かならず争ってどちらかが倒れるという意味の言葉だ。しかし、長嶋と王は、並び立って巨人軍の優勝に貢献した。
こんな例は他にあるかなあと考えた。なかなか見つからない。
長嶋、王とほぼ同じころ、大相撲では大鵬と柏戸が活躍をして、同時に横綱に昇進した。二人とも若くて、大きくて、格好もよい。人気は上々。柏鵬時代が来たといわれた。しかし、大鵬は長く勝ち続けて大横綱になったが、柏戸は長く続かず、それゆえ柏鵬時代は続かなかった。両雄並び立たずだった。
長嶋と王は、やっぱり「両雄並び立つ」の珍しい例だ。