マグネシウム・オイルというのは油ではない。塩化マグネシウムの水溶液だ。塩化マグネシウムはすごくよく水に溶ける。たくさん溶かすと、まるで油のようなドロドロ、ネットリした液体になる。これを俗にマグネシウム・オイルというらしい。
私は最近足がよくつるようになった。特に少し長く歩いたりすると、足の先がつってものすごく痛い。
困ってインターネットでいろいろ調べているうちに、このマグネシウム・オイルを塗ると、つるのが治るし、予防にもなるという記事を見つけた。
そこで、購入してみた。アメリカ製である。
確かに効いた。予防にもなるような気がする。それで、どうして効くのかが気になった。
マグネシウムは、体にとって必須な元素である。たくさんの酵素に必要な因子であるし、筋肉の収縮や神経伝達にも関与している。マグネシウムを供給することで筋肉の収縮や神経の興奮がおさまり、つるのが治るのかもしれない。
しかし、注射したり、口から摂取するのであればわかるけれど、マグネシウムの水溶液を皮膚に塗っただけではどうか。マグネシウム・イオンは皮膚の角質層というバリアーを通り抜けて、体内に入っていくのだろうか?
私はインターネットで文献の検索をしてみた。マグネシウムの皮膚浸透の論文はなかなか見つからなかったが、ようやくオーストラリアの研究者たちの論文が一つ見つかった。彼らによると、塩化マグネシウムを皮膚に塗ると、濃度および時間依存的に角質層を通過すると書いてある。その際には、毛孔が重要な寄与をするとも書いてあった。
その論文のイントロダクションに、昔から「死海セラピー」というのがあって、塩分濃度の高い死海の水が皮膚疾患に効くというのだが、それはマグネシウムによるものだと書いてある。
というわけで、足がつるのがおさまるのも、あながち理窟に合わないことではないらしい。しかし、いかにも研究の数が少ない。まだ半信半疑でいる。