かみさんは要介護1に認定されたので、いろいろなサービスを受けられることになった。
たとえば、ヘルパーさんが来てくれて、入浴、着替え、洗面、身支度、買い物、洗濯、掃除、調理など、生活する上でのいろいろなことを支援してくれるという。
いいじゃないかと思って、かみさんと相談した。
かみさんはいう。「そんなものは要らない」
「日常生活のいろいろなことは、いま自分でちゃんとやっている。他人が入り込むのはイヤだ」というのだ。
一方、「ポムポム川の辺」の所長さんは、ヘルパーさんの訪問介護を頼むべきだという。
以前にインターネットで、「老人ホームは介護保険で儲けている」という記事を読んだことがある。介護保険のサービスを提供すれば、介護保険のお金が老人ホームに支払われる。だからたくさんのサービスを受けさせようとする。要介護の入居者は歓迎され、要介護認定のない人は歓迎されないのだそうだ。
かみさんは歓迎されるが、私はぜんぜんウエルカムでないということだ。
ここの所長さんもサービスを受けろというので、そのくちかと思った。
所長さんは、介護サービスのいろいろなメリットを説明してくれた。たとえば、「入浴は自分でできる」といっても、果たして本当にちゃんと体を洗えているのか疑問なことが多いという。「足の先まで洗えていなくて、爪水虫になっている人がいたりして」。あっ、私も爪水虫だ。
「せっかく、認定が得られたのだから、サービスを受けた方がいいですよ」と所長さんは言った。「本人がいやだといっているんですけれど」と私が言うと、こともなげに、「たいてい、ご本人はそう言うんです。プライドがあるから。それを説得しなければ」と返された。
「私が説得しても聞き入れません」と私。
「息子さんに説得してもらえばいい。その方がいうことをきいてくれます」と所長さんが言う。
「私じゃダメですか」「そうです。息子さんがいい。息子さんのお嫁さんならもっといい。」
というわけで、息子に説得を頼むことにした。
かみさんは渋々承諾した。
ああ、私のいうことなんか、だれもきいてくれない。私のいうことに、なんでもうなずいてくれるAIの人形が欲しいな。