人が部屋に出入りする時には、普通はドアノブに手を触れて、ドアの開け閉めをする。そうすると、ドアノブには、その人の「記録が残る」。つまり、もしも、犯罪がおきたら、犯人捜査の重要なカギがドアノブに残されている。むかしは主に指紋だったが、今ではDNAなども捜査の対象になる。
 この間、英国のミステリードラマを見ていたら、面白いシーンがあった。ある老人の部屋が強盗に襲われた。強盗は、お金や宝石などを奪って逃げた。強盗は覆面をしていて、顔はわからない。
 やがて、容疑者の若者が逮捕された。彼には前科があったが、犯行を否認した。
 そこで、敏腕の弁護士が登場し調査する。被害者の老人が言うには、強盗が部屋から去るときに、あくびをした。その時に口を手で押さえたという。
 口を押えた手でドアノブを握ったのだから、唾液などがついているはずだ。そこからDNA を採取できれば、犯人がわかるはずである。しかし、ドアノブからはなにも出ない。弁護士は、警察官が無実の前科者を犯人に仕立てようと、ドアノブを拭いていたことを突き止めた。容疑者の若者は救われた。
 なかなか面白いドラマだった。それにしても、あくびをするときに、口を押えるなんて、礼儀正しいと言うか、しつけのよい強盗さんだなあ。