ソフト・シェル・クラブといっても、酒を飲むクラブや、記者クラブのクラブの仲間ではない。このクラブは「カニ」のことである。つまりソフト・シェル・クラブとは、殻がふにゃふにゃのカニのことだ。
 カニのような甲殻類は、成長するにつれて、古い殻をぬぎすてる。あたらしい殻は古い殻の下に準備されているのだが、まだ柔らかい。この脱皮したばかりのカニが、ソフト・シェル・クラブである。
 カニはとてもおいしいが、硬い殻があるから、肉をほじくり出すのに、一苦労する。ソフト・シェル・クラブは、殻が柔らかいので、殻つきのまま食べられる。
 私は、大昔にアメリカのボルティモアに留学していた時に、ソフト、シェル・クラブをはじめて食べた。フライにしたものだったが、おいしかった。殻ごと、抵抗なく食べられた。
 ソフト・シェル・クラブは、アメリカの東海岸の名物だそうだ。日本でも人気が出て、流行りそうに思うけれど、そうでもないらしい。身の入り方が、いまひとつなのが、人気の出ない原因だそうだ。
 カニに限らず、食べるときに面倒だと感じる食材はいろいろある。たとえばブドウ。種や皮を取り除くのが面倒である。そうしたら、シャインマスカットという品種ができてきて、いますごく人気がある。シャインマスカットは、皮も食べられるし、タネもない。
 ソフト・シェル・クラブが、もしも日本で人気が出ていたら、遺伝的にキチンの合成がうまくできず、殻がフニャフニャのカニの品種を、つくろうとしたかもしれない。
 パイナップルは皮がかたすぎる。ビワはタネが大きすぎる。食品への注文はいろいろある。
 魚は、骨が邪魔だ。そのうち、骨がふにゃふにゃのタイができるかもしれない。
 でも、あまりにも人工的な食品はいやだ。食べたくない。