廊下を挟んだ向かいの部屋には、男性が住んでいる。年は私と同じくらい。
 数日前のこと、その部屋のドアの手すりに風船が括り付けられていた。かなり大きな風船で、ハッピー・バースデーと書いてある。どうやらお誕生日を祝って、お孫さんが持ってきたらしい。
 私がびっくりしたのは、風船はしぼまず、何日もゆらゆらと空中を漂っていることだ。昔のゴム風船は、一日も経つとしぼんでしまって、地上に落ちてしまったのに・・・
 昔の風船はゴムでできていた。ガスは水素。いまの風船は、プラスティック製。ガスはヘリウムだ。こんなところにも、技術の進歩を見ることができるんだなあと思った。
 俳句の本で「風船」を調べると面白い句がたくさんあった。たとえば、
      風船の中の風船売りの顔        杉本 零
      風船の子の手離れて松の上       高浜 虚子
      置きどころなくて風船持ち歩く     北野 民夫

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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