先日、ラジオのあるニュース番組で聞いた話である。新型コロナウイルスの感染者をみつけるのに、イヌが有用だというのだ。イヌの嗅覚はすごくて、たとえば麻薬を見つけるように訓練されたイヌが、実際に活躍している。それと同じように、訓練を受ければ、イヌは、コロナウイルスに感染した人を、見つけることができるという。
これは、外国の研究者の研究である。ニュースの解説者が言った。「この研究報告は、まだ査読を受けていないようだ」
この解説者はえらいと私は思った。ふつう学術論文として認められるには、論文を投稿してあと、その分野の別の専門家の査読、つまり審査をうけなければならない。そこで、研究方法や結果の妥当性がチェックされ、パスして初めて学術報告として認められる。
これまで、マスコミで、話題として取り上げられた研究の多くは、ネイチャーとか、ランセットといった有名な学術誌に掲載されたものだった。つまり、査読を受けたものだった。
でも、コロナのニュースは違う。マスコミは、一刻も早く報道しようとしている。その研究報告が、査読を受けたものかどうかなど、気にしている暇はない。それはわかる。
ワクチンの有効性に関する報告、簡便な検査法開発のニュースなど、コロナ関連のニュースは、連日報道される。どこまで、信用したらよいのか、迷ってしまう。
ふと、大昔の遺伝暗号の解読競争について、聞いた話を思い出した。ノーベル賞受賞者で当時すでに大家だったオチョア博士と、若手のニーレンバーグ博士が、遺伝暗号の解読で、熾烈な競争をした。オチョア博士は、結果を学術雑誌に載せるより先に、ニューヨークタイムズに発表した。この方が早いにきまっているし、みんなが読むし、それにオチョアのようなエライ先生でないとできない。
考えてみると、今はインターネットがある。発表したければ、誰でも、いつでも、どんなことでも発表できる。
大切なのは、ニュースの受け手の、真偽を見分ける”眼力”ということになるなあ。