グリオン・クライシスは、私が書いたSF(サイエンス・フィクション)である。2002年に創土社から刊行された。
 世の中にSFはたくさんある。しかし、サイエンスと名乗ってはいるが、ほとんどは、ちっともサイエンティフィックでなくて、空想小説というかファンタジーのようなものだ・・・かねがね私はそう思っていた。本当に科学的な小説が欲しい。そして、とうとう無謀にも、自分で書いてしまった。
 これは伝染病の話である。伝染病の病原体は、ふつうは細菌(例えばチフスや炭疽)やウイルス(エイズや新型コロナウイルス感染症)である。これらはDNAかRNA をもっていて、その遺伝情報をもとに増殖する。
 ところが狂牛病(BSE)の病原体はプリオンで、その本体はタンパク質であることがわかった。プリオンが感染すると、動物の体の中で、自分と同じ仲間を増やしてしまう。これは今までの生物学の常識を覆す発見である。
 そうなるともっと別の形、別の仕組みをもつ病原体があるかもしれない。ということで新しい病原体グリオンを登場させた。一応、現代の生命科学の知識をベースにして、空想であるが、現代生命科学と矛盾しないように書いた。そのため、専門用語を説明する注釈をたくさんつけた。
 今、つまり世の中が新型コロナウイルス感染に苦しんでいる今、この小説を書いたならば、感染がパンデミックになって、大パニックが起きる様子に力点をおいて書いたと思う。しかし、当時の私の頭の中には、そんな考えは浮ばなかった。
 それで話は、科学者たちの努力に重点を置き、病原体が突き止められ、感染を抑えることができて、めでたし、めでたしで終わってしまった。今思うと、これは失敗だったなあ。
 話をパンデミックな感染にもっていき、しかもコロナ禍の今、出版していたら、もっと売れていたかもしれないなあ。
 天の声「あんたの文学的力量じゃ、それは無理だな」 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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