新型コロナウイルスの感染者が激減した。うれしいことだけれど、そのうちまた増えると心配する声がある。また、なぜこんなに急に減ったのかわからないと首をかしげる人も多い。
急に激減したことの説明の一つに、エラー・カタストロフィ説というのがあるそうだ。ウイルスが増殖しているうちに、変異がおきる。ウイルスが大増殖をすると、ウイルスにとって都合の悪い変異もたくさんおこり、それが、ウイルスの破滅につながったというのである。
エラー・カタストロフィ説というのは、どっかで聞いた名前だなと思った。そうだ、大昔、老化の勉強をしていた時に、出会った学説であることを思い出した。
生物の老化は何故おこるのか。昔、二つの有力な説があった。一つは、プログラム説である。生物は、体の中に、自己崩壊するプログラムを持って生まれてきたという考えである。人間などの体は、一個の受精卵からスタートして、分裂を繰り返し、発生・分化の過程を経て出来上がっていく。そして、成長し、成熟する。これらの過程は、生物に備わったプログラムに従って進行するように見える。老化と死は、その延長線上にあると考える。これがプログラム説である。
もう一つの説が、エラー・カタストロフィ説である。細胞が分裂を繰り返すうちに、複製や転写、翻訳の過程で、いろいろな間違い、つまりエラーがおきる。また、損傷したりする。そのために、機能が損なわれ、次第に老化し、やがてカタストロフィ、つまり死を迎えるという説である。
エラー・カタストロフィ説の中にも、いろいろなバージョンがあって、その一つに架橋説がある。私は、この説にいれこんでいた。その話は、次回にしよう。