アルツハイマー病は、代表的な認知症である。最近、アルツハイマー病患者の脳の中に、異常な形の鉄と銅が存在しているのが見つかって、話題になっている。多数の研究者(14人)の共同研究による論文が出版された。
 アルツハイマー病の患者の脳には、アミロイドと呼ばれるタンパク質が集まってできた塊(プラーク)がある。このプラークが、毒性を持っていて、神経細胞を死滅させるという説が、今のところ有力である。
 アルツハイマー病の患者(故人)二人の脳を調べると、このプラークになかに、異常な形の鉄と銅が見つかった。異常なというのは、鉄と銅がイオンの形ではなくて、金属の状態なのだという。
 体にとって、鉄も銅も必須の元素だが、ふつうは、イオンの形で存在している。つまりプラスの電荷をもっている。言い換えると、酸化された状態にある。ところが、アルツハイマー病患者に見つかった鉄と銅は、電荷をもっていない状態なのだ。
 このような鉄や銅は、すぐに酸化されやすい。言い換えると、反応性に富む。まわりの物質と、化学反応をおこしやすい。そのようにして起こる反応が、脳の細胞にダメージを与えるのかもしれないという。
 もちろん、まだわからなことだらけである。このような鉄と銅が、アルツハイマーの患者の脳にしか存在しないのかどうかも、検討されていない。これらの鉄と銅が、どのように生成されるのかもわからない。
 しかし、この発見は、多くの示唆に富み、アルツハイマー病がおきるメカニズムの解明や、その治療法の開発に、役立つ可能性があると考えられている。
 脳にはわからないことが、いっぱいあるのだなあ。