アルツハイマー病の新薬が開発され、アメリカで承認されたというニュースが伝えられた。コロナ禍の中での、久しぶりの朗報だという人もいて、大騒ぎになった。開発したのはエーザイとアメリカの製薬会社で、エーザイの株価はすごく上昇したという。
 アルツハイマー病は、代表的な認知症である。認知症の中で、患者数は最も多いし、他の認知症も、最後はアルツハイマー病に移行するそうだ。
 今までの治療薬といえば、神経伝達物質アセチルコリンの分解を防ぐもので、病気の進行を遅らせるかもしれないというものだったが、今度の薬は、治療する薬というので、画期的と思われる。
 アルツハイマー病になると、脳の神経細胞が、たくさん死滅してしまう。その原因は、神経細胞内に、べータ・アミロイドというタンパク質が蓄積し、その毒性によると考えられている。今度の薬は、沈着したアミロイドを取り除く作用を持つというのだ。
 アルツハイマー病でも、初期の患者にしか効き目がなさそうだし、まだ治験も十分ではない。日本で承認されるかどうかもわからない。承認されても、保険の適用になるかどうか、薬価がすごく高くなるのではないかなど、問題点もいろいろ指摘されているが、老人の一人として、大いに期待している。
 新型コロナワクチンの開発、そしてこのアルツハイマー病の薬の開発を見ていると、病気の予防・治療、私たちの健康維持に、製薬会社がとても大きな貢献をしていると思った。
 私は今まで、病気の治療・予防や人間の健康維持の主役は医師で、製薬会社は脇役のように思っていた。しかし、本当に主導的な立場にあるのは、薬を開発する製薬会社の方で、薬を使う方、つまり医師ではないのかもしれない。
 もっと言えば、本当の主役は、製薬会社にある人工頭脳AIではないか。AIが、あらゆるデータを集め、解析し、作戦を立て、人間サマにこうやりなさいと指令を出す。その結果、素晴しい薬が開発される・・・そのように私は想像している。
 そうならば、AIに足を向けて寝られない。