私は長いこと大学の教員をしていた。大学の教員の仕事のひとつは、学生さんをほめることだった。
 学生たちは時期が来ると就職活動をする。その時に指導教員の推薦書が必要になることが多かった。
 医科大学にいたときはそんなことがなかったのだが、農学部に移って、推薦書をたくさん書く必要がおきた。
 どう書けばよいか、困ってしまった。推薦書というのは、ほめなければならない。たくさんの学生さんたちをどうほめればよいのか。
 ある先生が助けてくれた。その先生はよその大学の先生だったが、何かの会合で知り合い、親しくなった。とてもユーモアのある方で、川柳だか狂歌だかを趣味としておられた。百人一首をもじって、一人百首という作品集をくださったことがある。
 その先生がご自分でつくった学生のほめ方マニュアルを私に見せてくれた。
 「ぐずぐずして何もしない」学生は「思慮深い」とホメ る。
 「あまり考えないで、無鉄砲に行動する」学生は「積極的」とホメる。
 「わがままで、自己中心的な」学生は「自分の考えをしっかり持っている」とホメる。
 「変わっているヤツ、変人」は「個性的」とホメる。
 「優柔不断、あるいははっきりした自分の意見がない」学生は「協調的」とホメる。
といった具合である。
 これには助かった。これを使って、何通も推薦書を書いた。
 会社の就職採用の係りの方、ごめんなさい。
 でもきっと、そんなことは織り込みずみでしょうね。大学の教員の推薦書なんか、はじめから重要視してないだろうな。
 このほめ言葉は、結婚式披露宴の際のスピーチにも使った。
 でも、やっぱり、ケナスよりもホメた方がいい。その方が気分がいい。
 さらにいうと、ホメられる方がもっと気分がいい。うれしい。だれかこのブログをホメてください。