新型コロナウイルスの感染者が、また増えだした。それで、一旦は対面授業に戻った講義を、またリモートに切り替えだした大学が多いという。
 リモートの講義といえば、私は20年以上前に経験がある。長年勤めた大学を定年になったあと、山口県の私立大学の、通信制の大学院の教員になった。そして、テレビ放送で授業をすることになった。この話は前に書いたことがある。
 講義はテレビでするのだが、質疑応答はどうするのか。何やら、上端にカメラのようなものがついた、大きなテレビを見せられて、これで相互の対話ができるのだという。教員と学生に貸し出すというのだ。
 昔のことで、テレビは液晶ディスプレーでなく、すごく大きい。使用法も複雑らしい。メカニズムもよくわからない。そんなものを自宅に置くはためらった。
 結局、私は借りなかった。おそらく、借りて実際に使った先生は、あまりいなかったのではないかと思う。なにしろ、ほとんどの先生は 、東京や関西の大学を定年になって再就職した人達である。新しい機器には弱い。電子メールさえ、使わない人がいた。
 いま考えると、あれを使っておけば、時代の先駆者だと自慢できたのに、惜しいことをした。
 結局、学生さんとの対話は、電子メールでやった。
 通信制の大学院ということで、学生さんは社会人ばかりである。中には会社を定年退職した人もいて、私なんかよりも、ずっと人生経験の豊富なようだった。なにしろ、社会の荒波にもまれてきているのだ。
 学生さんのなかに、現役の国立大学の教授がいたのには驚いた。その向学心には頭が下がるが、ちょっと嫌味だなあ。
 あんなことがあった。こんなこともあった。いまは、すべてが夢のように思える。年を取るというのはこんなことなんだな。

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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