死ぬのは誰でも怖い。死ぬ瞬間を誰も経験していないから、どんなことなのか誰も知らない。どんなに苦しいのか、死んだあとどんなことになるのか、誰も知らない。
死ぬことへの恐怖から、宗教が生まれたそうだ。宗教が死への恐怖を和らげてくれるというのだが、残念ながら、私たち日本人の多くは、宗教と深くはかかわっていない。今の若い人たちのことはわからないが、私たちの頃は、結婚式は神主さん、お葬式はお坊さんのお世話になるのが普通だった。宗教とはそんな程度の付き合いだった。
外国の人たち、たとえばイスラムの人とに比べると、日本人の宗教へと思いやかかわりは、くらべものにならないほど薄いと思う。
科学を勉強してくると、さらに宗教への思いは薄れてしまう。宇宙のかなたのことまで、あるいは生命のメカニズムまで、詳細にわかってきて、神とか天国とかが入り込む場所がない。死後の世界とか来世とかを信じる気になれない。
もちろん、科学と宗教をうまく、両立させている人もおられると思うけれど、私なんかはダメだ。
「科学者にも受け入れられる宗教が必要である。いま、それを考えている」というある哲学者の文を、むかし見たことがある。残念ながら、なんという先生だったかおぼえていない。そして、その先生がどのような哲学を発展されたのかもわからない。
あのアインシュタインは、死が近づいたとき、初めて経験する死に対して、科学的な興味を持った。そして、眼を輝かして死んでいったそうだ。
この話は本当なのかどうか知らない。でも、科学者のハシクレとしては、こんな死に方ができればいい思う。
できるかなあ。
天の声「あんたには無理だ」