コラーゲン中のヒドロキシプロリンの生合成メカニズムを研究するために、重酸素をトレーサーに使うことになった。重酸素水をイスラエルから購入することになったのだが、すごく高価だった。ラーメンや週刊誌が30円で買えた時代に、十数万円もした。それを電気分解して重酸素を含む酸素をつくった。どんな装置でやったか、覚えていないが、手作りした。そういった装置や操作は、田宮先生の得意な領域で、懇切に指導していただいた。
何しろ高価な重酸素を扱うので、緊張で手が震える。そうするとかえって何回も失敗した。
コラーゲンの合成系としては、孵りかけのニワトリの卵を使うことにした。12-13日目のかえりかけの卵を容器に入れる。重酸素を風船に詰め込み、その容器に入れる。急いでまわりを窒素ガスで置換したのち、風船を割ると重酸素の空気が出来上がる。そしてふ卵器の中で24時間放置したのち、卵の中のニワトリを取り出し、全部加水分解する。それからヒドロキシプロリンを分離して、分析にかけるという手順だ。
重酸素を風船に詰め込むのは難しい作業だったが、どうやったか忘れてしまった。覚えているのは、風船として避妊具を使ったこと。破れにくい最高級のものを研究費で買った。このアイディアを出したのは誰だったかなあ。