コラーゲンというタンパク質には、構成アミノ酸としてヒドロキシプロリンが存在している。それもたくさんある。コラーゲン以外の大抵のタンパク質にはヒドロキシプロリンは存在しない。だから、コラーゲンの目印になっていて、コラーゲンの定量をするときには、このアミノ酸の量を測定して、その値から推定することが多い。
ヒドロキシプロリンは、プロリンに水酸基が1個付いた構造をしている。人間やネズミはヒドロキシプロリンを食べる必要はない。体の中でつくることができる。
大昔、1944年にステッテンらは、重水素と重窒素で標識したプロリンをネズミに与えたところ、コラーゲンのヒドロキシプロリンの中に取り込まれることを見つけた。1949年には、彼女は重窒素でラベルしたヒドロキシプロリンをネズミに与えてみた。予想に反して、コラーゲン中のヒドロキシプロリンには取り込まれなかった。つまりコラーゲン中のヒドロキシプロリンは、遊離のヒドロキシプロリンには由来せず、プロリンから作られることがわかった。
これはすごく面白い現象である。コラーゲンの合成過程のどこかで、プロリンの水酸化が起こって、ヒドロキシプロリンができるのだ。いま、これを大学院の入学試験に出したら、すべての受験生は翻訳後修飾だと正答するに違いない。しかし、その当時は、タンパク質一般の生合成過程も明らかになっておらず、謎のままだった。