老人ホーム「ポムポム川の辺」に入居して1か月半が過ぎた。最初は一人で外出するのを怖がっていたかみさんだが、今では駅前のスーパーマーケットに毎日のように出かけていく。
それはかなり大きな店で、1階が食品スーパー、2階にはドラッグストアと衣料品や雑貨を売る店、3階には100円ショップ、書店、文房具店などがある。
かみさんのお気に入りは、2階と3階である。
朝10時ころに出かけて、昼ご飯を食べずに、午後2時ころまで店の中をうろついている。そしてキャスター付きの買い物袋に戦利品を詰め込んで帰ってくる。
中身はこまごまとしたもの。きれいな飾りのある歯ブラシ立て、きれいな模様のついた鍋敷き、ネコの模様の玄関マット、かわいらしいしょう油さし・・・・
どれも高くはないものばかりだから、まだいいけれど、狭い部屋がこんな小物でいっぱいになりそうである。
お店の方、すみません。邪魔でしょ。たいして儲けにならないでしょう。
「この頃、買い物は手早くお願いしますって、お店が言うのよ」
そらね。
「コラナがはやっているから」
「あっ、そうか」
息子に話すと、決まり文句が返ってきた。「お母さんが夢中になるのはいいことだ。脳の活性化になる!」