Hさんは「ポムポム川の辺り」に一人で入居している女性である。年は80歳ぐらい。でも姿勢はよくて、背筋が伸びている。顔つきはキリッとしていて、かみさんに言わせると、ちょっと怖い。
特に重い病気を持っているわけではないらしい。それなのに、なぜ老人ホームに入っているのか、私たちにはわからない。
彼女の生活を見ていると、大変規則正しい。
朝8時のホームの朝食。まあ、これは誰でも食べるけれど。
9時過ぎに散歩に出かける。お天気が悪かろうが、寒かろうが出かける。
一時間ぐらいで帰って来る時もある。なかなか帰ってこない時もある。そういう時は、朝早くから開いている喫茶店に入って、お茶を楽しんでくるらしい。
80歳のおばあさんとはとても思えない行動である。まして老人ホームの入居者のイメージにぜんぜん合わない。彼女をおばあさんと呼ぶのはふさわしくない。老婦人と呼ぼう。
日本のお年寄りもモダンになってきたのだ。
昼食もホームの食堂で食べる。晩御飯もホームの食堂で食べる。毎日である。
「飽きないのかしら」とかみさんはいう。
「さあ、どうなんだろう」
「幸せなのかしら。なんだか淋しそう。」
「そうかなあ」
「家族の人が誰も面会に来ないみたい。」
「そうか」
こんな老人が、だんだん増えていくような気がする。
天の声「この人はおばあさんではなくて、老婦人だと。それではアンタはどうなんだ。ジジイじゃないつもりなのか?」
私「ジジイさ。もちろんジジイだ。そしてこのブログは “ジジログ” だ。」