戦争に負けて、みんなしょんぼりしていた時代に、日本人を勇気づけた人たちが何人かいる。水泳の古橋選手、ノーベル賞の湯川博士などと並んで、ボクシングの白井義男さんもその一人だ。
白井さんは、日本人として初めて、プロボクシングの世界チャンピオンになった。そのころはテレビはない。ラジオで、試合の中継放送を聞いた。
白井さんは軽い階級(フライ級)だし、アウトボクシングといって、派手に打ち合うタイプではなかった。
もちろん、スリルのあるのはヘビー級の試合である。日本では、重い階級の選手がいないので、見ることができない。ジョー・ルイスという、10年不敗のチャンピオンが、日本に来たことがあった。試合のためではない。新聞に載った写真は、寒そうで、不機嫌な顔をしていた。
私が、アメリカに留学していた時、ムハンマド・アリ(当時はキャシアス・クレイと呼ばれていた)とソニー・リストンの世界ヘビー級タイトルマッチがあった。ふつうのテレビでは放送してくれない。クローズド・サーキット・TVとかいって、劇場で大きなスクリーンで中継した。もちろん高い入場料を取った。
私は、友人と見に行った。リストンの方が、どう猛で強そうだった。ダウンのあるスリリングな試合を期待していったのに、ダウン無し。途中で、リストンが戦意を失い、コーナーの椅子に座ったまま出てこなかった。大したダメージもないみたいなのに。アリの勝ち。あっけなくて、期待外れの試合だった。
でも、いまとなっては、いい思い出だなあ。
天の声「年寄りは、なんでもそう言う」