江上不二夫先生は、名古屋大学教授、東京大学教授、三菱化成生命科学研究所所長を歴任された。たくさんの業績があるが、代表的なものの一つは、グアニン特異的リボヌクレアーゼT1の発見である。この酵素は、ホリーによるtRNAの構造決定(1968年ノーベル賞)に大きな貢献をした。
先生は、このような特異性を持つ酵素を発見しようと思って研究したわけではないといわれる。研究がすでに進んでいた膵臓のリボヌクレアーゼと比較するために、麹菌の酵素をいろいろ調べているうちに、新しい特異性を持つ酵素を発見したのだ。麹菌の酵素を研究して人は過去にたくさんにるけれども、自分の興味あることしかやらなかったから、T1酵素を発見できなかったのだと先生は語っている。
まさに、牛馬的研究の神髄である。
私は不肖の弟子。「研究のこころ」を読んでもピンとこなかった。頭の中に入ったのは、「まぐろずしの、まぐろだけ食べては失礼」というところだけだった。
私は、お酒を飲むときは、ご飯は食べたくない。それで、すしがあると、上だけ食べてしまう。そうしながら、先生の詩を思い出して、心の中で、「先生、すみません」と謝る。バカだなあ。
今の若い研究者に、先生の「研究のこころ」は、どのように響くのか。学問がどんどん進んでしまって、牛馬的研究・・・つまり他人がウシで研究をすれば、自分はウマで研究を、といっても、今はウシもウマも研究済みという時代かなと思う。さあ、どうすればいいのだろう。
天の声「あんたが不肖の弟子なことはわかった」