1960年代のはじめ、私がコラーゲンの研究を始めたころには、すでに「コラーゲン研究会」という学会があった。この会は、病理学者の河瀬収先生が主宰されたもので、演者は公募でなく、指名された数人の研究者が、講演をした。生物学、生化学、病理学、解剖学、高分子学、物理化学など幅広い領域の専門家が選ばれた。
 私も、「コラーゲンの系統発生」というテーマの時によばれて、ミミズやカイチュウのコラーゲンの話をした。
 1969年には、結合組織研究会が始まった。この会は、病理学者の大高裕一先生が主宰された。
 第一回大会があって、一般演題の他に、特別講演が企画され、なんと、私が、その特別講演をやることになった。その時、私は、33か34歳ぐらいの若造である。もっと年上の、業績もある先輩の方がたくさんおられるのに、私がやることになった。きっと、えらい先生方が断って、私にお鉢がまわってきたのだろうと思った。
 怖いもの知らずで、私は引き受けてしまった。しかし、当日初めてお会いした大高先生は、威風堂々、威厳のある先生で、私は、ビビってしまった。多分、先生も、「なんだ、こんな小僧っ子が来た」と驚かれたろう。
 私は、「コラーゲンのプロリン水酸化」の話をさせていただいた。
 大高先生は、その後も、先生が編集された本の中の、「コラーゲンの生化学」の章の執筆を、私に依頼された。それも急いで書いてくれという。きっと先輩の先生が、なかなか原稿を書かなくて、しびれを切らした大高先生が、私に依頼したのだと思った。うーん、これも邪推かなあ。
 コラーゲン研究会と、結合組織研究会は、今は合併し、発展している。大高先生のお名前は「大高賞」として残っている。
 天の声「邪推ばかりしてはいけない」


 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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