老人ホーム「ポムポム川の辺」に入って、最初の朝。8時5分前にチャイムが鳴り、アナウンスが流れた。「朝食の時間です。必ずマスクをして、足元に気を付けて食堂にお越しください。」
私たちが食堂に入り、適当なテーブルに座ろうとすると、一人の女性(つまり、おばあさん)が教えてくれた。「まず手洗いをするんですよ。」そうかあ。その人は丁寧に手の洗い方をおしえてくれた。「まず、石鹸でよく洗う。ペーパータオルで拭いてから、アルコール消毒液を塗り込む。」
このおばあさんは別にホームの職員ではない。私たちよりも先に入っていた入居者であった。仮にMさんとしておこう。Mさんは前に「ポムポム」系列の別の老人ホームに入っていて、「川の辺」ができたので、移ってきたのだという。だから老人ホームのしきたりをよくご存じなわけだ。老人ホームのハシゴをする人もいるのだなあ。
私たちより先に入っていたおばあさんがもう一人いて、すでにMさんと仲が良くなっていた。MさんはこのKさんをかみさんに紹介した。こうしてかみさんはたちまち友達を二人つくることができた。
それから、食堂では毎日3人で同じテーブルに座るようになった。
私はというと、一人で小さめのテーブルに座って、一人で食事をすることにした。その方が気楽でいい。それに、かみさんの繰り言から解放される。
女性は、老若を問わず、仲間でつるむものらしい。
男はちがう。「男はつらいよ」の歌の中で、寅さんは歌う。「男の人生一人旅、泣くな、なげくな影法師・・・」