コーヒーを好きな人は多い。喫茶店に行くと、大抵の人はコーヒーを注文する。私はコーヒーが苦手だ。コーヒーを飲むと、胃の調子が悪くなる。
元同僚のHさんも、喫茶店ではコーヒーを飲まなかった。その理由は、コーヒーは他の飲み物と違って、”吸光度”が高すぎるからというのである。コーヒーの色は濃くて、とても分光光度計では測れない。ほかの飲み物、たとえば緑茶や紅茶、サイダーやラムネなどは、そんなに色が濃くない。コーヒーだけが異常に濃い。だから、薄めて飲むべきだというのが、Hさんの主張だった。
Hさんは生化学者だから、物質の濃度の測定のため、分光光度計で吸光度を測るのが、日常的な仕事だった。吸光度が高すぎると、希釈して測りなおさなければならない。だから、吸光度には敏感になっていた。
実際に、彼はすごく薄い、つまり色が緑茶程度のコーヒーを、自分でつくって飲んでいた。さすが生化学者だ。いや、一種の職業病かな。
日本的な食堂、たとえばおそば屋さんに入ると、お茶をサービスに出してくれるところが多い。昔、あるおそば屋さんに入ったら、お茶をくれない。訊くと「お茶は出しません。そば湯をのんでください」ということだった。
この話を友人にすると、「それは見識が高い店だ。ぜひ行ってみたい。きっと、そばもうまいに違いない」といった。私には、お茶をケチっているようにしか見えなかったけれど。
お茶には、新型コロナウイルスを不活化し、感染の予防効果があるという。お茶の関係者は張り切っているだろうなあ。えっ、コーヒーにもウイルス不活化効果があるの?
お茶の時間やコーヒーブレイクを、コロナ禍の時代には、こまめに取るのがいいようだ。
天の声「あんたは、いつもお茶してるよ」