老人ホームに入る前に住んでいた家のそばには、水田があった。水田では、いろいろな動物を見ることができた。
まず、ザリガニだ。ザリガニを見ると、なんだかなつかしい。子供の時に捕まえたし、息子が子供の時にも、捕まえるのを手伝った。小学生の時には、自由研究でザリガニの住んでる場所を研究すると称して、学校の池のザリガニを採った。
ザリガニは、するめの切れ端を結び付けた糸で、すぐ釣れた。バカというか、食いしん坊というか。
ある日、水田の中に、不思議な形の生物を見つけた。甲冑を着たような動物である。カブトガニという動物がいるが、あれをずっと小さくした形をしている。1センチメートルぐらいかな。水の中を泳いで、見えなくなった。あとで、調べると、カブトエビという生物らしい。カブトガニと同じように、太古のロマンを感じさせる、不思議な生き物だ。
水田の動物を狙って、サギがやってくる。白い色をしているが、大きさがいろいろだ。シラサギの仲間らしい。
シラサギは、田んぼの近くを流れる川にもたくさんいた。浅瀬に立って、じっと水面を見ている。時々、素早く、くちばしを水の中に入れて、小魚を採る。
川には、ウもやってくる。ウは、水中に潜って、魚を獲る。サギは、ウの泳いでいるそばの浅瀬に立っている。ウに追われて、浅瀬に逃げてきた魚を待ち構えているのだ。サギはずるがしこい。その名の通りだ。
そのサギを、タカが狙っている。ある日、タカが、自分と同じくらいの大きさの、シラサギをつかまえるのを見た。あの時は、興奮した。動画を取れたらいいのにと思ったが、私はスマホを持っていないからダメだった。まさに、野生の王国、弱肉強食の世界だ。
「ポムポム川の辺」の近くの川は、人工的で、そんな野生の世界はみることができない。でも、実は私の目にとまらないだけで、小さな生き物たちが、弱肉強食の世界をつくっていることだろう。
ちなみに、老人ホームも、弱肉強食だと、誰かがいっていた。