たまたま玄関のホールで所長さんに会ったら、「もう書きましたか?」といわれた。「なにか書類を書くんだっけ」と思ったら、所長さんは「あれですよ」と指さした。そこには、一本の笹が立てられていた。「笹が手に入りました。短冊、自由に書いていいですよ」
そうだ、七夕の季節になったのだ。老人ホームに入って、はじめての七夕である。見ると、もうすでに、いろいろな色の短冊が、笹につり下げられていた。
「いつも健康に」「みんなが健康で暮らせますように」・・・やっぱり、健康を願う短冊が多い。
「安らかに最期を迎えられますように」・・・老人ホームならではである。
ロマンチックなものはない。これも老人ホームならではかな。
私は書かなかった。別に願い事がないわけではない。やっぱり、安らかに死にたい。
さて、七夕といえば、仙台が有名である。仙台の七夕祭りは8月に行われる。街の通りには、大きくて、華やかな飾りが、たくさん立てられる。人がぞろぞろ歩いている。
私は仙台に6年ぐらい住んでいたが、七夕祭りを見に行ったのは一回きりだ。人ごみが苦手だからだ。それに暑いし。
でも、いま考えると、当時の仙台の暑さなどは、大したものではなかった。普通の家庭には、冷房がなかった。職場にもなかった。それでも、夏を過ごすことができた。今、お天気情報を見ると、東北や北海道も随分暑くなっている。変わってしまった。
変わったといえば、私が住んでいたころは、仙台名物に牛タンはなかった。いつごろから、牛タンが名物になったのだろう。笹かまぼこは、むかしから名物だったけれど。
あれ、また脱線した。