アジサイの花が咲く季節になった。老人ホームに入る前に住んでいた家の近くに、川があって、岸辺にアジサイがたくさん植えられている場所があった。「紫陽花の小径」という看板がたっていた。そうだ、アジサイは紫陽花と書くのだ。眺めながら、ここで一句つくれればいいのになあと思ったりした。
 歳時記をのぞくと、アジサイの句がたくさん出ていた。たとえば

   あぢさゐの色ではじまる子の日誌       稲畑汀子

 アジサイを、「あぢさゐ」と書いている句がほかにもたくさんある。むかしは、このように表記したのだ。私は、生物の名前は、いつもカタカナで書いてしまう。これでは情緒がないと自分でも思う。
 アジサイは梅雨のころ、花が咲く。小さな花がたくさん集まって、毬のような形になる。色が、白、青、赤、紫と変化する。それで「七変化」とも呼ばれているそうだ。
 花の色は土質によっても変わる。酸性土では青、アルカリ性土では、赤紫になる。リトマス試験紙の反対である。アジサイの花の色素は、アルミニウムと結合すると青くなる。酸性土だと、アルミニウムが溶けやすく、その結果、花が青くなるのだそうだ。
 この花の色の変化は、推理小説にしばしば登場する。アガサ・クリスティーの作品にもあったと記憶している。
 紫陽花忌というのがある。7月17日で、俳人、水原秋櫻子が亡くなった日である。
 お名前から、秋桜つまりコスモスの咲くころ亡くなったのかとと思ったらそうではなかった。死ぬ日はえらべない。
 天の声「あんたは詩心がない」