にかわ(膠)は、動物の骨や皮を水と煮てできた液を、乾かしたものである。主成分はゼラチン、つまり構造がこわれたコラーゲンだ。
古代エジプトの頃から、にかわは接着剤として使われてきた。ファラオの墓から出土する棺、調度品、工芸品などにつかわれているそうだ。
日本でも、墨の材料ににかわが用いられたことが日本書紀に記されているという。
コラーゲンcollagenの語源は、colla(にかわ)のgen(もと)というラテン語だそうである。
昔は日本ではコラーゲンは膠原(こうげん)とよばれていた。文字通り「にかわのもと」という意味だし、発音も似ている。どなたが作ったのか知らないが、うまくできた訳語である。
しかし今は膠原はほとんど使われていない。ただ膠原病collagen diseaseという言葉は残っている。リウマチ、エリトマトーデスなどの病気を指す言葉である。コラーゲンがこれらの病気のもとと考えてつくられた言葉だが、皮肉なことに、これらは自己免疫疾患で、コラーゲンが病気のもとではないことが後でわかった。
しかし、一方では、コラーゲンが原因でおこる病気はいろいろあることもわかっている。たとえば骨形成不全症という病気はコラーゲンの遺伝子の異常によりおこる。肝硬変はコラーゲンがたくさんできすぎて起こる。
むかし、文化財の専門の先生から、古い文化財につかわれている「にかわ」が、どんな動物のものか、わからないだろうかと相談されたことがある。ウシかシカかが問題らしい。当時の私の知識と技術ではとても無理そうだったので、できないと答えた。
今の技術なら、わかるのだろうか。”現役のコラーゲン博士”、コメントをお願いします。
以上、「にかわ」を「にわか」に勉強してお話ししました。