こむずかしい架橋の話を長々として申し訳ないが、もう一回だけ我慢してほしい。
 コラーゲンの加齢に伴う変化を説明するには、架橋が3段階あると考えるよいことがわかった。すなわち、未熟架橋、成熟架橋、そして老化架橋である。ピリジノリンが見つかって、未熟架橋と成熟架橋は理解が進んだ。
 それでは老化架橋はどんなものだろう。私たちも、いろいろ探ってみた。ある日、新架橋成分を見つけ、構造を調べて、ヒスチジノアラニンという物質であることを突き止めた。ヒスチジノアラニンは、ヒトの大動脈壁などに存在し、確かに老化とともに、その量はふえていく。
 私は、うれしくなったのだが、よく調べると、この架橋は、どうやらコラーゲンにはなくて、その周辺の複合タンパク質(ある種のリンタンパク質とか、プロテオグリカンのコアタンパク質?)に存在することがわかった。私はがっかりした。
 現在コラーゲンの老化架橋として注目されているのは、グリケーションと呼ばれる反応の産物である。グリケーションについては、前にこのブログで取り上げたことがある。アミノ酸やタンパク質と糖が共存すると、自然に(つまり酵素なしに)おこる化学反応である。
 反応は大変複雑であり、さまざまな物質ができ、変化していく。そのうち、反応の後期に出来てくるものはAGEs (advanced glycation end- products) と呼ばれている。そのなかに、架橋物質がある。何種類もあるらしく、そのいくつかは同定された。しかし、この辺の新しい発展を、私はフォローできていない。
 このように、コラーゲン架橋の3段階の正体がわかってきた。
 そして、老化に対する戦略も見えてくる。まずは、糖尿病にかからないことである。糖尿病は血液の糖の濃度が高いので、グリケーションが早く進んでしまう。つまり、老化も早く進んでしまう。
 天の声「架橋の話となると長いなあ」

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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