「老化は病気である」という仮説が評判になっているそうである。アメリカのシンクレア博士が提唱した。一般に老化は人間の運命で、避けて通れないと考える人が多かったので、この意見は衝撃だったようだ。
 シンクレア博士によると、老化は「エピゲノムの持つ情報の消失」だそうだ。エピゲノムとは、遺伝子を取り巻く情報環境のこと。つまり、老化は、遺伝子自体ではなく、遺伝子を取り巻く環境に関係しているのだという。
 遺伝子の本体は二重らせん構造を持つDNA だが、DNAは裸で存在しているわけではない。ヒストンというタンパク質がつくる構造体(ヌクレオソーム)に巻きついている。DNAの情報が読み取られるときには、ヌクレオソームに巻き付いている構造が緩む必要がある。
 巻きつき構造を緩めるのが、ヒストンのアセチル化だ。ヒストンがアセチル化されると、構造が緩んで、情報を取り出すことができる。逆に、アセチル基が取り除かれる(脱アセチル反応)と情報は取り出せなくなる。つまり、ヒストンのアセチル化、脱アセチル化が、遺伝情報発現のスイッチになっている。
 アセチル化、脱アセチル化を行うのは酵素である。脱アセチル化を行う酵素は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)と呼ばれていて、このブログで何度か自慢したが、私たちが50年も前に発見した。このHDACをうまく制御すれば、老化を防げる可能性が出てきたのだ。では、どうすればよいか・・・続きは次回。

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

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