老人ホームの朝食(いや、別に朝食に限ったことでもないようだが)は、いろいろな材料を組み合わせて使い、消化が良さそうで、薄味である。いかにも、「お年寄りに配慮をしています」といった感じである。
私は標準食だが、個人個人に対する配慮もされている。ご飯じゃなくておかゆの人もいる。箸じゃなくてスプーンで食べる人もいる。手が不自由なのだろう。
食後に介護士さんが薬を持ってきてくれる人もいる。これなら、まちがいなく、食後に飲むことができる。
ご飯の量が半分の人もいる。糖尿病なのかな。それとも太るのが嫌なのかな。単に小食なだけかな。
ご飯じゃなくて小さなパンが2個付いてくる日があった。ごはん半量の人にはパンは1個しかついていない。その人は不満だ。「パンは2個食べたい」といった。
さっそく介護士さんが3人集まって協議。さらに調理師さんもやってきて協議。ようやく結論が出た。「いいでしょう。パンの時は2個あげましょう。」
いろいろ配慮がされているのは、よくわかるのだが、ちょっと面倒くさい。
薄味なのは血圧への配慮か。目玉焼きが出ても、しょう油はかかっていない。もちろんテーブルの上にはしょう油も塩も置いてない。納豆が出たときにはさすがに文句を言う人がいた。「おしょう油をかけてきてよ。」
介護士さんは調理場に走っていった。やがて帰ってきて答えた。「味付けはしてあります。」
老人ホームの朝食の時間はゆっくり過ぎていく。