この間ラジオを聞いていたら、この頃の若者は羊羹を食べないという話をしていた。虎屋の羊羹さえ知らない。「『とらや』ってなーに? えー、あの看板は『やらと』というお店のものかと思っていた」。とらやの看板(暖簾)は左から右に書いてあるらしい。
 大昔、アメリカに留学した時に、両親が虎屋の羊羹を持って行けと言って、カバンの中に入れてくれた。税関で「これは何か」と、とがめられた記憶がある。スイーツだといって通ることができた。
 研究室のアメリカ人に食べさせた。彼らは恐る恐る口にいれて、それから「おいしい」といった。お世辞のようだった。
 これもラジオで聞いた話だが、ある識者が、栗羊羹が素晴らしいとほめていた。羊羹の中に、栗が均等に入っている。つまり、切り分けると、どの一切れにも栗が入っているようになっている。しかも、栗は底に沈んでいない。これをつくるのは、日本の菓子職人のすごい技術だと感心していた。そういわれるとそうだ。
 私は、甘いものをそれほど食べないけれど、こうやって羊羹のことを書いていると、渋いお茶と羊羹の一切れが欲しくなる。