「ポムポム川の辺」に入居したのだから、川の話をしなければと思う。
確かに川がホームのそばを流れている。それほど大きな川ではない。両岸はコンクリートに固められていて、風情はあまりない。でも、遊歩道が整備されていて、桜の並木がずーと続いている。春になると素晴らしいに違いない。
川の水は意外にきれいで、澄んでいる。ところどころに淀んだところがあって、そこに大きな鯉がゆうゆうと泳いでいた。
私は考えた。もしも人間以外の動物に生まれ変わるなら、鯉になりたい。
大空を自由に飛べる鳥もいいが、空を飛ぶのは体力がいるだろう。調子が悪いときにはシンドイだろうなあ。年を取ったら、もう駄目だ。飛べなくなる。
アフリカの広い広い草原で、青空の下、のんびりと草をはむカモシカなんかもよさそうだけれど、いつライオンに襲われるかわからない。きっとびくびくして暮らしているのだろう。年を取ったら、機敏に逃げることはできなくなる。
ではライオンはいいかというと、狩りをして獲物を捕るのは大変そうだ。疲れる。オスのライオンは狩りをしなくて楽そうだけれど、ほかのオスに縄張りを取られないように見張ってなければならないらしい。
どれもつらい。特に年を取ってくるとつらそうだ。
その点、水の中にいる動物はよい。浮力があるから、体を支える必要がない。年をとっても楽だろう。
もちろん天敵がいて、油断すると食べられてしまう。
しかしである。川の中の鯉は、小魚の頃は天敵がいるだろうが、ある程度大きくなれば、人間以外に怖いものはなさそうだ。水の中を悠々、のんびりと泳いでくらしていればいいのだ。エサは何か流れてくるものを適当に食べていればよい。
だから私は大きな鯉になりたい。むかし「私は貝になりたい」というテレビドラマがあったけれど、「私は鯉になりたい」。
でも、これって老人の目線だよね。