私の弟は、人懐っこく、人当たりがよく、社交的だった。私とは大違いだ。
 弟は、東大の農学部を卒業し、大学院に進んで博士号を取ると、東北大学農学部の助手となった。そして、助教授、教授と昇格していった。 履歴書に職歴を書く時は、3行で済む。これはエリートの証明だそうだ。私とは大違い。私は、職歴を書くと、東京医科歯科大学助手、東京大学理学部助手、東北大学理学部助手、同講師、同助教授、浜松医大教授、東京農工大学教授・・・と長ったらしくなる。
 私は、いろいろな大学のいろいろな学部を遍歴して、東京農工大学に就職した。農学部は初体験。知っている人は誰もいない。その時、弟は東北大学農学部の教授になっていた。会合でいろいろな人と出会うと、そのたびに、「○○先生のお兄さんだそうですね。やっぱり先生よりも老けていますね。」といわれた。私の立ち位置は、今度は「先生の兄」となった。

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

私のアイデンティティ(5)件のコメント

  1. 博士のbiography、大変興味深い内容です。何より客観的な観察眼に裏打ちされた独特のユーモアと韜晦、言い回しは大変魅力的だと思います。

    fj

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