かみさんは書道が好きだ。子供のころから好きだったそうだ。私は習字が子供のころから苦手で、大嫌い。かみさんと私とは趣味でも一致しない。
かみさんが書道を本格的に習いだしたのは、浜松から東京に戻ってきてからだ。書道にはいろいろ流儀があるそうだが、かみさんがどういう流儀なのかは知らない。一週間に一回、先生のところに通っていたのだけれど、宿題を家でやっていかなければならないなど、なかなか大変であった。
特に、展覧会の前などは、まるで受験勉強のようであった。でも、かみさんは頑張って、とうとう「師範」の免状をもらった。この「師範」がどのくらいの「えらさ」なのか、私は知らない。師範を取ったら、習いに行くのをやめてしまった。
息子はアメリカに留学したことがある。帰国後、数年たってから、また渡米する機会があった。お世話になった先生に、何か日本のお土産を持っていきたいという。
アメリカ人で漢字が好きな人がいる。中には、とんちんかんな漢字をプリントしたTシャツを着ている人もいる。
そこで、誰が言い出したの忘れたが、かみさんの書をあげたらどうかということになった。これだと、お金がかからない!
そこで、息子はその先生のところに、かみさんの書を持っていった。いま、その書がどうなっているのかはわからない。ひょっとして、今でも先生の家に飾ってあるかもしれない。とっくにゴミ箱行きかもしれない。
「ポムポム川の辺」に入居する前に、同じ系列の老人ホームを見に行ったことがあった。そこでは、書道のサークルがあった。「ポムポム川の辺」でも書道のサークルがあったら入りたいといっていたのだが、できたばかりで、趣味のサークルは何もない。
近所に書道教室があるのを、息子たちが見つけてくれたのだが、いまひとつ気に入らないらしい。
趣味は楽しくなければならない。難しいものだ。