私はお酒は強くないが好きだ。ずっと晩酌を楽しんできた。350mlのビール一本を飲み、それから冬なら燗をした日本酒を少し、夏ならウィスキーの水割りをほんの少し飲む。飲むと晩飯がおいしくなる。
かみさんの父親は酒好きだったので、男は晩酌するものだと思って育ったらしい。晩酌に抵抗がない。これは好都合だった。
ところが「ポムポム川の辺」の食堂では、飲酒禁止である。
さあ、どうしよう。そこで考えた。
第1案は、食堂の晩御飯が始まる前に自室で飲む。第2案は、食堂で晩御飯を食べた後に自室で飲む。第3案は食堂で晩御飯を食べずに自室で晩酌する。
まず第1案を試した。ところが飲みだすと、もう食堂に行くのが面倒くさくなることが分かった。
第2案も試した。しかし、ご飯を食べた後に酒を飲むのでは、せっかくの酒があまりおいしくないことが分かった。これではつまらない。
やっぱり、晩酌、つまり晩飯を食べながら酒を飲むのが、一番良い。
そこで、第3案に落ち着いた。ホームの晩御飯をキャンセルし、かみさんにつまみになるものを買ってきてもらった。いまは、スーパーでも、コンビニでも、ドラッグストアでも、調理済みの食品をいっぱい売っている。それも、みんなうまくできていて、おいしい。
私にはそれで十分だが、かみさんはそれに何か手を加えないと気が済まない。そして言う。
「これじゃ昔と変わらないじゃないの。ホームに入った意味がない!」