いま、一人暮らしの老人が増えているという。特に女性が多いそうだ。そのうえ、十分な収入がない人が多い。年金をもらっていても、それだけで暮らせるほどもらっている人は少ない。
いまは一人で暮らせても、いつか介護の必要なときがくる。公的な介護施設は入るのは、倍率が高くて簡単でない。私立の施設に入るのにはお金がかかる。先行き、不安である。
いまは一人暮らしでなくても、いつまでも子供たちに頼るわけにもいかない人が多い。子供たちは、共働きの夫婦が多いから、介護が必要になった時に、年寄りの面倒を見るのは難しい。年寄りは邪魔だ。
いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう。
老人が長寿になったこと、少子化、夫婦共働き、核家族化などが原因だろう。長寿を除けば、戦後、日本人が欧米の文化や習慣にあこがれを持ち、積極的に取り入れた結果だと思う。
「アメリカでは、子どもは成人になったら、独立して、親の家から出ていく。夫と妻は同権で、共働きをしている」というような話をいつも聞かされた。またそうしよう、そうなろうと努力をした。その結果がいまだ。
むかし―ー1960年代か1970年代に書かれた本だと思うけれど、アメリカのジャーナリストの書いた本を読んだことがある。そこには、核家族化や夫婦共働きの結果、アメリカ人の老後は寂しく、不幸せだと書いてあった。そして、見習うべきは、東洋の知恵、「大家族」だと書いてあった。
東洋では、親、子、孫の3代が、ひとつ屋根の下で暮らしているのが普通だ。そして老人は家族のみんなに尊敬されている。年をとればとるほど、尊敬され大切にされている。それが人間の理想の老後の姿だと書いてあった。
今、その本を思い出し、そして日本の現状を考えると、すごく皮肉な結果になっていると感じる。
でも、今から後戻りはできない。どうしたらよいのか私にはわからない。