健康補助食品としてコラーゲンは依然として人気があるようだ。その説明書には、「ヒトの体のコラーゲン量は、年をとると減少する」から補う必要があるのだと書いてある。
 減るから食べて補えばいいという単純はことではないのだけれど、たしかに皮膚や骨のコラーゲンの量は、老人になると減少する。
 ヒトの腕の皮膚の単位面積当たりのコラーゲン量は、20歳から80歳までほぼ直線的に年1パーセントの割合で減少すると報告されている。これがシワやタルミの原因の一つになると考えられる。
 骨のコラーゲン量は、30歳がピークで、その後年齢とともに減少する。特に女性は閉経後、減少が著しい。太さは変わらないので、骨がスカスカになって、折れやすくなる。骨粗しょう症はこうしておきる。
 なぜ減少するのかというと、コラーゲンの合成と分解のバランスの異常と考えられる。高齢になるとこれらの臓器では、分解が合成を上まわってくるらしい。
 しかし体の中には、年をとるとコラーゲンが増えてくる臓器もある。たとえば筋肉や肝臓ではコラーゲン量は老人になると増加する。
 骨や皮膚では、コラーゲンが主要な構成成分だが、肝臓や筋肉では主体は細胞で、コラーゲンは細胞と細胞の間にある。年をとると細胞の数がだんだん減っていき、それを埋めるようにコラーゲンが増えていく。結果として臓器の機能は低下していってしまう。
 傷つくと、コラーゲンを合成して傷を埋める。これは体の中でよく起きる現象である。たとえば酒を飲みすぎると、アルコールの毒性で肝細胞が死ぬ。するとそのあとをコラーゲンで埋める。その結果肝臓は硬くなり、肝硬変になる。
 老化の際にはもっとゆっくり細胞が死に、コラーゲンが増えていく。そして臓器の機能が低下していく。 
 つまり、老人になるとコラーゲンがふえる臓器もあり、へる臓器もある。
 ふえるとかへるとか、一概にはいえない。
 世の中には、一概にはいえないことがたくさんあるよね。

 

投稿者

コラーゲン博士

85歳の老人ホーム入居者 若いころは大学でコラーゲンの研究を行っていた

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です