かみさんが買い物に行くスーパーマーケットは、坂を下ったところにある。つまり、帰りは、坂を上ることになる。買い物した荷物を持って坂を上るのはきついと、ぶつぶつ言っている。
「帰り道が下り坂になるためには、谷底に住まなければ」と私は慰めていう。「でも、谷底に住むのはいやだろ」
人が住むのは高台がいい。なぜかな。高台の方が、見晴らしがよくて気持ちがいいからだろうか。水が出る心配がないからかな。むかしから、山手は住宅地だ。商業地は下町である。
本郷の東大のキャンパスのあたりは、山手である。私に記憶では、東大のメインキャンパスと農学部の間にある坂道を下ると、あっという間に上野に出ることができた。つまり、下町に出た。「山手は高台、そこから下ると下町」ということを、とても鮮やかに実感できた。
むかしは、東京の山手といえば、文京区や新宿区のあたりをいったようだ。つまり、山手線の内側の地域だった。それが、いまは、もっと広く、山手線の外、たとえば世田谷のあたりも、山手と言っている。山手というのは、必ずしも、物理的に高いところをさすのではなくて、住宅地、それも高級住宅地のことをいうようになったらしい。
一方では、「山手に住んでいるのは、昔からの東京人ではない。よそから来た人たちだ」という見方もある。本来の東京人は下町に住んでいるそうだ。
山手線だが、いまは「やまのてせん」という。むかしは「やまてせん」と呼んでいた。どういうわけか、いつの間にか「やまのてせん」になった。
むかしは、池袋―赤羽間を走る電車があって、やはり山手線と呼ばれていた。短くて、変な路線だった。今は、あれは延長されて、埼京線の一部になっているのかな。
とりとめの話になってしまった。
天の声「いつもそうだ」