夫婦別姓を認めないという判断を、最高裁が下したというので、話題になっている。女性科学者のことを考えると、夫婦別姓を認めてほしい。
女性科学者は優秀である。結婚する前に、論文を書き、業績を上げた人が、別姓になると、キャリアーを失い、ふりだしにもどってしまう。今の世の中、何でも検索する。姓が変わってしまっては、検索にかからない。
私の同世代にも、女性研究者は大勢いた。姓の問題を抜きにしても、十分に待遇されていたとは言い難い。なかなか昇進できず、つまり自分の研究室が持てず、ずっとボスの補佐で過ごす人がいた。
ボスにとっては、とても便利な存在である。なんでも知っていて、なんでもやってくれる。研究もすれば、学生の面倒も見てくれる。研究室の雑用を一手に引き受けてくれる。まるで、家庭の専業主婦のような存在だった。
60年近く前に、私はアメリカに留学した。そのとき、隣の研究室は、女性の研究者が主宰していた。スティーブンスという助教授の先生で、まだ若かった。30歳になったか、ならないかぐらいの年の人だった。
彼女はとても素晴らしい業績を上げていた。DNA依存RNAポリメラーゼの発見者の一人だ(この酵素は複数の研究室で、ほぼ同時に発見された)。この酵素は、分子生物学のセントラルドグマの基本の酵素である。本来ならノーベル賞ものだが、もらえなかった。オチョア博士が、RNA合成に関与すると思われる酵素を先に見つけて、ノーベル賞をもらってしまったからだろうといわれていた。
スティーブンス博士は、自分の研究室を持ち、ポスドク(博士研究員のこと)を抱えていた。そして、このポスドクと結婚した。ハッピーだ。
それを見ていると、日本の女性研究者とは大違いだと思った。やっぱり日本は遅れている。
これは60年近く前の話である。今はどうなんだろう?