昔、あるお年寄が一日中探し物をして暮らしているという話を聞いた。笑い話として聞き流していたが、いざ自分たちが年を取ってみると、ホントだということが分かった。
例えば、かみさんは入れ歯をなくした。部屋中を一生懸命探したが見つからない。もう一度つくってもらうことになった。
調理に使うナイフがなくなった。これも見つからない。セキュリティのしっかりした建物だから、変なことはないと思うけれど、刃物だけに気持ちが悪い。
テレビのリモコンが見つからない時があった。部屋中探したが、見つからない。そうしたら、しばらくしてから、事務所に届いていることがわかった。誰がどこで見つけて届けてくれたのかわからない。
私は杖をなくした。多分スーパーに買い物に行って、そこに置き忘れたのだと思う。スーパーの事務所に訊いたがなかった。杖が必需品になってきたのに、あの日は杖なしでどうやって帰ってきたのだろう。
でも、一番失せたものといえば、「若さ」だなあ・・・