私が子供の頃、卒業式でうたう歌といえば「蛍の光」と「仰げば尊し」であった。
「蛍に光」は心にしみるメロディーの曲だが、歌詞が難しくて、意味がよくわからなかった。
「仰げば尊し」もよい曲だが、生意気盛りの頃は、この曲を歌えという先生たちに反発した。自分のことを「尊し」と歌えと、強要するのはいかがなものかと思ったからだ。
もっとも、私は小学校、中学校、高校と一貫していた学校に行っていたので、本当に別れ別れになるのは高校の時だけだったし、高校の時は大学受験で、卒業式どころではなかったように思う。
大人になって、大学の教員になった私は、今度は違う立場になった。
仙台にいたとき、大学の学科の卒業行事では、森山良子さんの歌、「今日の日はさようなら」が流れた。
「蛍の光」、「仰げば尊し」の世代の人間からすると、とても新鮮に感じた。時代が変わったのだと思った。
歌詞の中に、「空を飛ぶ鳥のように自由に生きる」というところがあった。いま、老人ホームにいて、束縛の多い不自由な生活をしていると、ホント「空を飛ぶ鳥のように・・・」と歌いたい気持ちになる。
東京の農学部に勤めていた時には、学科の卒業行事として、主任教授が、卒業生一人一人に卒業証書を手渡した。その時には、ヘンデルの「勝利をたたえる歌」が流れた。
勝利をたたえる!湿っぽい別れの歌や曲よりもこの方がいい。
でも、勝者がいれば、その裏には、敗者がいるはずだ。
敗者は誰なのか?
私たち、教員なのかな?