ミツバチは群れをつくり、高度な社会生活を営んでいる。群れは1匹の女王バチ、少数の雄バチ、そして数万匹の働きバチからできている。女王バチと働きバチは雌である。
働きバチは、巣をつくり、蜜や花粉を集めるなど、すべての労働を行う。卵は産めない。体は小さいし、寿命も短い。
女王バチは、体が大きく、寿命も長い。たくさんの卵を産む。
女王バチも働きバチも、もとは同じ卵である。遺伝子的には区別がつかない。それが違う運命をたどるのは、女王バチとなる卵は王台に産卵され、もっぱらロイヤルゼリーを与えられて育てられるからである。それゆえ、この現象は、エピジェネティクス、つまり、DNAの塩基配列の変化によらず、遺伝子の働きを制御する仕組みの代表的な例と考えられている。
ロイヤルゼリーは、若い働きバチの咽喉腺から分泌される物質で、芳香のあるバターのような感じのものだ。人間は昔から長寿強精の妙薬として賞用してきた。タンパク質やビタミン類を豊富に含んでいる。しかし、どうしてこのような働きがあるのかは長い間わからなかった。
それが、最近になって、ロイヤルゼリーの中にエイチダックの働きを阻害する物質が含まれれていることがわかった。エイチダックは2週間ぐらい前に説明したが、酵素の一種で(また自慢をすると私たちが50年前にはじめて報告した)、エピジェネティクスのカギとなるものだといわれている。
つまり、エイチダックの働きをうまくコントロールできれば、いろいろな可能性が生まれる。老化も認知症もガンも制御できるかもしれない。
そして、私たちが毎日食べている食品の中にも、エイチダックの働きを制御する物質があるらしいのだ。
それはなにか。この話のつづきは次の機会で。
今日はこの辺で終わりにして、ペキンダックを肴にイッパイやりたいものだ。