秋が来て、マツタケのシーズンになった。今年は豊作で、値段も比較的安いそうである。
私は、特にマツタケを食べたいと思わない。味覚が発達していなくて、子供なみなのかもしれない。みんなが言うほど、あの香りがいいとも思えない。それでも、マツタケの土瓶蒸しは、何度か食べたし、はじめて食べたときのことを、時々思い出してしまう。
土瓶蒸しは、マツタケ、白身魚、エビ、鶏肉、ミツバ、ギンナンなどの具とだし汁を土瓶に入れて、蒸したものだそうだ。この土瓶にお猪口が添えられて、出てくる。それにスダチが添えられている。
初めてそれが目の前に置かれたとき、どう食べればいいのか困ってしまった。仕方なく、よその人のやることを真似した。まず土瓶のふたを開けて、香りを楽しむ。それから、スダチをお猪口に絞り入れて、土瓶から汁をそそぎ、味わう。そのあとは、土瓶に箸を突っ込んで、具を食べればいいらしい。
食べ方さえわかれば、なかなかおいしい料理だ。
マツタケを、こんなに珍重するのは、日本だけだという話を聞いたことがある。私の先輩の先生は、アメリカのシアトルに住んでいる。いわゆる頭脳流出組の一人だ。その先生が言うには、シアトル近郊には、マツタケがいっぱい自生しているという。誰も取らないので、取り放題だそうである。でも、本当にマツタケなのかどうか、怪しい気がする。その先生が中毒を起こしたという話は聞いていないけれども、食べるのには勇気がいる。
天の声「秋だなあ」