かみさんが要介護1に認定されたので、ヘルパーさんが訪問介護に来てくれた。毎週1回来てくれるのだという。
かみさんは、ヘルパーさんが来るのを嫌がっていた。よその人に家の中を見られるのがいやだし、いじられるのもいやだという。息子と二人で説得して、ようやく受け入れた。
ヘルパーさんが来る時間の直前に、家の中を片づけておかなければならないといいだした。私はあわてて、「片づけをしてくれるために来るのだから」といって止めた。
やってきたヘルパーさんは、いつもお世話になっている、介護士さんのひとりであった。ああ、そういうシステムなのか。
ヘルパーさんがやってくるなり、かみさんは言った。「別にやってもらうことないのよ。やったことにして帰っていいわよ」
「そんなことはできません」と彼女は難しい顔をして答えた。そりゃそうだよね。
ヘルパーさんは、さすがプロだ。手際がいい。部屋に入るやいなや、部屋中を見渡し、まず床を掃除し、トイレも掃除してくれた。
洗面台は、見違えるようにピカピカになった。かみさんは驚いて、なぜこんなにピカピカにできるのか、掃除の仕方を質問していた。なんでも特殊なスポンジを使うといいらしい。「100円均一の店で売っていますよ」とヘルパーさんはこともなげに答えた。
作業がすむとかみさんはお茶を勧めたが、「いただけません」と断られた。もちろんお菓子もダメ。椅子にも座らない。
そういうわけで、無事に終わった。かみさんはヘルパーさんが来ることを、あんなに嫌がっていたのに、けっこう楽しそうに雑談もしていた。
私はほっとした。
ただし、私の部屋はきれいにしてもらえないのだ。要介護でないから仕方ないけれど。